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感熱マルス券とは?

国鉄時代のM型端末から、マルス券の印字には熱転写印字が用いられてきました。しかし、最近では感熱プリンタを採用したマルス端末が増備されはじめ、感熱マルス券が発券されるようになりました。ここでは、主に従来の熱転写印字のマルス券と比較しながら、感熱マルス券について紹介します。

熱転写マルス券との比較

従来の熱転写印字のマルス券と感熱印字のマルス券を比べてみましょう。次の2枚の画像をご覧ください。(クリックすると200dpiの拡大画像が見れます。)

感熱印字のマルス券 熱転写印字のマルス券
感熱印字のマルス券 熱転写印字のマルス券

画像からもお分かりの通り、感熱マルス券は赤みを帯びた券紙が特徴的です。(JR各社などによって若干の違いがあります。)

熱転写マルス券との比較 - 印字の特徴

感熱マルス券は、熱転写印字に比べて印字にも特徴があります。次の画像をご覧ください。(クリックすると600dpiの拡大画像が見れます。)

マルス券の熱転写/感熱での印字の違い

画像上段が感熱マルス券、画像下段が熱転写マルス券の印字です。熱転写印字では、はっきりとした黒の印字がなされていますが、感熱印字では、印字される文字も赤みを帯びており、特に文字の輪郭部分が赤みを帯びているのが特徴的です。

感熱マルス券は、2色印字の感熱紙を用いて赤と黒の発色をおこなっています。高温域では黒色、低温域では赤色に呈色するため、高温域の黒色を発色すると、熱がかからない文字の境界部分に、低温域の赤色が発色するため、輪郭部分が赤みを帯びるものと思われます。

なお、この感熱マルス券の開発に関する技術記事が、王子製紙グループのWebサイトにあります。

新型感熱磁気乗車券の開発(2色マルス券)
  http://www.ojiholdings.co.jp/r_d/tech_news/007.html (外部リンク)

感熱マルス券を発券するマルス端末

感熱マルス券を発券する感熱プリンタを採用したマルス端末には、MR31、MR32、MV40、ER型端末があります。このうち、窓口で使われているMR31、MR32型マルス端末については、発券プリンタのフロントパネルが緑色で、金属音のような高音域の動作音をするのが特徴です。

JR西日本では、MR32型マルス端末と本体の区別が難しいMR12W型マルス端末も使用していますが、同端末は発券プリンタに熱転写方式を採用しているため、発券プリンタの違いや動作音で区別しなければなりません。

感熱マルス券の収集に関する問題点

感熱マルス券の収集においては、従来の熱転写方式を採用したマルス券に比べて、特徴的な問題点がいくつか知られています。

印字が消える?

従来の熱転写方式を採用したマルス券では、印字が劣化することが原理的にほぼ考えられないため、長期間の保存にも耐え、きっぷ収集の対象としての地位を確立してきました。しかし、感熱マルス券では、呈色材をマルス券表面に塗った感熱紙を用いているため、この呈色材が経年変化により 化学変化を起こしたり、揮発したりすることにより、印字の長期間保存ができないのではないかという問題点が多くの収集家によって指摘されています。

感熱マルス券は感熱紙では最高レベルの保存性を実現

先のリンク先で紹介した王子製紙グループのWebサイトでは、「感熱紙では最高レベルの保存性を実現しています。」と記載されているように、この感熱マルス券は保存性を十分に考慮した設計となっているようです。現在では、通常の保存状態で印字が消えたなどの問題は指摘されていないようですが、感熱マルス券の登場からまだ日が浅い現状では、印字の保存という点で今後の不安要素となってしまうようです。

劣化を避ける感熱マルス券の保存法

券面の一部が焼けた感熱マルス券

感熱マルス券の保存には、一般的なきっぷの保存と同じように、高温・多湿・直射日光を避けるのが原則のようです。高温・多湿・直射日光の条件では、硬券と同じように券が焼けてしまいます。

券面の一部が焼けてしまった感熱マルス券の例を示しましたが、感熱印字の文字はほとんど劣化しておらず、感熱マルス券の高い保存性が実証されている例ともいえるでしょう。

ハンコとの相性が悪い?

指定券発行印が押された熱転写マルス券
指定券発行印が押された感熱マルス券

表面コーティングに違いがあるためか、感熱マルス券は、スタンパーをはじめとするハンコとの相性が良くないことがあります。掲載の画像上は従来の熱転写マルス券、画像下は感熱マルス券ですが、2枚のきっぷに4個押された指定券発行印のうち、感熱マルス券に押されたものだけが滲んでいます。インクの種類によっては全く問題がない場合もありますが、感熱マルス券とハンコの相性には気を留めておく必要があるのではないでしょうか。

感熱マルス券登場の背景

この章では、なぜ感熱マルス券が登場したのかという背景について考えてみることにします。

技術的な側面

まず、マルス券は2色印字を必要としたことや、印字の耐久性の問題から、感熱紙ではこれらの問題をクリアできなかったという技術的な背景が考えられます。さらに、従来の熱転写式の印字では、2色印字に必要な黒と赤のインクリボンを装着することが必要で、これらのコストはもちろん、発券プリンタが複雑で小型化できないという問題も抱えていたものと思われます。

インクリボンも都合がよかった?

インクリボン控の模式図

一方で、従来の熱転写式の印字を採用するメリットも存在します。それはインクリボンによって、物理的に印字が行われたという証拠が残ることです。発券プリンタが紙詰まりを起こしたり、発券異常などの事故が発生した際に、実際に発券されたか否かということが問題になることがあります。従来の熱転写式の印字では、インクリボンの控えでこれがはっきりします。加えて、内部で不正などが行われる場合も想定して、物理的な発券控が残ることに都合がよかったわけです。掲載の画像にインクリボン控えの模式図を示しました。黒色のインクリボンに対して、熱転写印字された文字の部分だけ黒が抜けて透明になるわけです。(以下、作文中...)